世界をリードする生命科学の教育研究拠点
大学院統合生命科学研究科長 船津 高志

近年、生命科学研究は著しい進展を遂げています。原子?分子レベルで生体分子の構造と機能を理解しようとする還元論的なアプローチにより、大きな成果を上げてきました。これらの知見をもとにして構成論的なアプローチが可能になり、人工知能などの情報科学と連携しながら、特定の機能を有するタンパク質などの生体分子機械を自在に設計?応用することが可能となってきました。また、生物をシステムとして理解することが可能になり、細胞の人工的な創出も試みられるようになってきました。このように、「生命を理解し、創り、利用する」研究サイクルが急速に展開しています。特に、ゲノム編集技術の進歩により、基礎研究と農業?医療への応用の距離が大幅に縮まりました。
こうした変化に対応するためには、生命科学に関する多様で膨大な知識を獲得し、体系化し、活用することが求められます。広島大学は、既存の枠組みにとらわれることなく広い視野をもち、発展?変革し続ける生物学?生命科学の分野で社会に貢献する人材を育成するため、2019年に「統合生命科学研究科」を創設しました。本研究科では、理学?工学?農学?医学の各分野において細分化した生物学?生命科学を有機的に連携し、学生が特定の専門分野に偏ることなく、幅広い知識と能力を習得できるようにしています。そのため、生物工学、食品生命科学、生物資源科学、生命環境総合科学、基礎生物学、数理生命科学、生命医科学の7つの学位プログラムを統合し、一つの専攻として設置しました。本研究科は、生命科学研究の世界トップレベルの教育?研究体制を構築し、次世代の社会に貢献できる人材の育成を目指しています。