宮島の自然を守るとりくみ
講師。骸趰u大学瀬戸内CN(カーボンニュートラル)国際共同研究センタ
グリーンイノベーション部門 宮島自然植物実験所 坪 田 博 美 准教授
初めに坪田准教授から宮島の歴史?現在の人口?文化等について話された。宮島では神の使いと言われているのは鹿や猿ではなく、カラスであると話され、参加者13人の関心を引き付けた。
宮島の自然は日本三景にあげられ、世界遺産でもあり世界的に有名である。もみじ饅頭やアナゴ飯等食べ物が有名、鹿は奈良から来たものではなく在来のもの等々話されが、宮島の一番の売りは、ほぼ自然状態で森林が残されていることであると説明。
*以下講義内容
宮島の植物や植生について、弥山の原生林は国指定の天然記念物で、固有種はないが希少種が多く、里山のような人為的な環境にあらわれる植物の割合は小さい。
宮島の動物について、猿について現在個体数は少なく、ミヤジマトンボ(絶滅危惧種)は日本で生息しているのは宮島だけある。鹿は有名であるが、宮島では人間と共存してきた長い歴史がある。鹿の餌付けが与える影響は、個体数の変化や鹿の行動の変化、人獣共通感染症の危険性、鹿以外の野生動物への影響があり、人が作った環境に適応した個体の増加や遺伝的な多様性の低下は、最悪の場合地域の個体群の消滅に至る可能性がある。
地球は、過去5回火山活動、隕石衝突などで地球規模の環境変動が要因で、生物絶滅の危機があった。現在、人類の活動の結果、生物多様性が脅かされており、6回目の大量絶滅の危機にある。その要因として生息地の破壊、乱獲、汚染、気候等環境の変化、外来種の繁殖等があげられる。
生物多様性を守るためには、多岐にわたり国際的、国内的な取り決めが重要で、種の保護や保全、構成要素の確保、環境保全等に必要な制約を設ける条約や法律が必要である。
我々は、様々な恩恵を生態系から受けており、これらは生態系サービスの一種としてとらえることもできる。それは、生物多様性が保証されてはじめて成立するものである。しかし、水、酸素などの資源供給サービス、気候、防災、土壌汚染、疾病から守られる調整サービス、芸術や医療等の文化的サービスの恩恵を受けるも、貨幣価値に換算できるのはごく一部であることを認識すべきである。
宮島と人間のかかわりでは、厳島神社のできる前から宮島はある種の聖域で、江戸時代までは薪を含め島内の森林伐採は原則として禁止されていた。歴史的背景から人の手は本当にかかわっていないのか。江戸時代以降は森林が利用され、人が入っていたことは林野火災があったことからわかる。宮島は紅葉で有名でもあるが実は多くのモミジは植樹されたもので、あと戦争施設の跡、炭火窯の後等が残っていて全くの手つかずではない。戦後の豪雨災害や松枯れの際にも人の手が入っている。しかし、宮島は瀬戸内海にありながら、自然の状態で植生が残されているという点で大変貴重である。
では、宮島の自然を守るために、重要なことはなんであろうか。
自然を守ろうとする住民の意識、自然の価値が分かる人材育成、それはその心を普及させることにも繋がり、過去から続く宮島での習慣?規律を維持すること、またそれらは法律?条例等により保護されてきた。この中で、人材がもっとも重要と考える。宮島自然植物実験所は宮島に関する基礎研究を継続することが重要で、次世代の人材育成も広島大学の使命といえる。
講義の後、参加者から、モミジは人の手で植樹されたとのことだが、いつ頃植えられたのかという質問があり、坪田准教授から「植えた意図は分からないが約150年位前に植えられた。それまではウリハダカエデが自生しているのみであった」と丁寧に答えられていた。
広島大学きてみんさいラボ